30代で転職を考え始めたとき、気持ちが落ち着かないのは自然なことです。20代ほど勢いで動けない一方で、今のまま続ける未来も、具体的に想像できてしまう。だからこそ「間違えたくない」が強くなるのだと思います。
転職は、正解が一つに決まる話ではありません。けれど、考え方の順番を整えるだけで、焦りは少し弱まります。今日はそのための記事です。
30代の転職は「遅い/難しい」で判断するより、“今の自分の条件と優先順位を言語化して、合う選択肢を選ぶ”のがいちばん現実的です。
実際、転職する人そのものは増加傾向にあります。総務省の労働力調査(詳細集計)では、2024年の転職者数は331万人で前年差+3万人(3年連続増)とされています。また厚労省の雇用動向調査では、転職入職率は30〜34歳で男性10.3%・女性13.2%、35〜39歳でも男性7.9%・女性10.5%と、30代でも一定数が動いていることがわかります。
「みんなが転職しているから、あなたも」という話ではありません。ただ、“30代だから転職が成立しない”と決めつけなくていい。ここが結論です。
状況を整理する(思考整理)
30代の転職は、うまくいく・いかない以前に、論点が混ざりやすいのが難しさです。まずは混線をほどきます。
1)不満は「会社」ではなく「条件」に分解する
「この会社が嫌だ」と感じるとき、実際は条件が合っていないことが多いです。例えば、
給与(上がり方も含む)
労働時間・休日・働く場所
人間関係・マネジメントの相性
仕事内容の適性(得意/消耗する)
評価の納得感
成長の実感(学べる環境)
厚労省の雇用動向調査でも、前職を辞めた理由として、女性は「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」「職場の人間関係」が上位に出ています。男性でも「給料等収入が少なかった」などが理由に挙がります。つまり、悩みは“甘え”ではなく、条件のミスマッチとして起こりやすい。
2)「変えたいもの」と「守りたいもの」を別々に書く
30代は守るもの(生活、家族、信用)が増えます。だから、
変えたい:残業、年収の頭打ち、休日、通勤、仕事の裁量…
守りたい:勤務地、安定収入、子育て時間、健康、今の専門性…を分けて書くと、判断が急に現実的になります。
3)転職=退職ではない(選択肢はもっとある)
“転職したい”の中には、実は別の願いが混ざっていることもあります。
休みたい
評価されたい
学び直したい
人間関係を変えたい
将来の不安を減らしたい
願いが違えば、打ち手も違います。ここを取り違えないのが、30代の転職では大事です。
選択肢を並べる(比較・判断軸)
ここからは「転職する/しない」ではなく、選択肢を横に並べます。30代は、“今の生活を壊さずに改善するルート”も十分に価値があります。
異動希望、業務量の調整、評価のすり合わせ
働き方(勤務形態)の相談
上司変更やプロジェクト変更の打診
転職は環境を大きく変えます。一方、会社内で変えられることが意外と残っている場合もあります。まず“社内での打てる手”を棚卸ししてからでも遅くありません。
30代転職で現実的に進めやすいのは、経験の延長線上です。企業側は中途採用で「即戦力」を期待しやすく、30代はまさに“期待される層”にもなります。実際、企業の中途採用では30代の採用を行っている割合が高いという調査もあります(リクルートワークス研究所の調査では30代採用を行った企業が57.0%)。※調査年は2019年で古めなので、傾向把握として参照。
加えて、ミドル層の転職でも「これまでのスキルを転職先で活かせている人が約7割」という研究もあります。“30代=詰み”ではなく、“活かし方の設計が必要”という話に近いです。
30代のキャリアチェンジは、20代より難しく感じやすいです。でも、難しいのは「年齢」だけではなく、説明の設計です。
なぜ今、その職種なのか
これまでの経験がどう役立つのか
入社後、何を再現できるのか
この3点が言語化できると、職種転換でも話が通りやすくなります。
「今すぐ転職」は怖いけれど、現状も変えたい。そういうときは、学び直しが“中間の一手”になります。厚労省には、キャリア形成やリスキリングの相談を無料で受けられる窓口も用意されています。転職活動は、孤独になりやすいので、こうした外部の相談先を使うのも現実的です。
転職市場は景気・人手不足・業界状況で揺れます。直近では、2026年上半期の転職市場は活況見込み、という民間の市場予測も出ています。ただし“活況”でも、あなたの職種・地域・希望条件では難しいこともある。だからこそ、応募する前に
求人票の要件
年収レンジ
求められる経験を眺めるだけでも、判断は一段クリアになります。
判断軸(ここだけ押さえると迷いが減る)
選択肢を比べるときは、次の5つで十分です。
収入:今より上げたい?下げてもよい?下限はいくら?
時間:残業、休日、通勤、在宅など“生活の設計”
成長:3年後に増えていたいスキルは何か
安定:雇用形態、会社の事業、業界の波
納得:価値観(何に疲れて、何に充実するか)
迷いは、情報不足というより「軸が多すぎる」ことで増えます。軸は減らしていいです。
判断するときの注意点
1)30代は「期待値」が上がるぶん、入社後のギャップ対策が大事
中途は、入社直後から“自走”を期待されやすい。そのプレッシャーで苦しくなるケースもあり、定着が課題になるという指摘もあります。だからこそ、面接では“よく見せる”より、
何ができて、何ができないか
どんな支援があれば立ち上がれるかを誠実にすり合わせるほうが、長期的には安全です。
2)年収は「上がる前提」にしない
転職で年収が上がる人もいますが、必ずではありません。一方で、転職後の年収が増えたという調査結果もあり、上がる可能性を否定する必要もない。たとえばマイナビの転職動向調査(2024年実績)では、転職後の平均年収が転職前より増加したという結果が示されています。大切なのは「上がるか」より「下がったときに生活が持つか」を先に試算しておくことです。
3)焦りの正体は、だいたい“比較”
SNSや転職体験談を見るほど焦るときは、比較の対象が増えすぎています。比較は情報としては役立ちますが、判断の主体が自分から離れると、決め手が消えます。いったん「自分の優先順位」に戻る。これだけで、転職はずっと落ち着いて進められます。
4)「辞めてから考える」は、リスクが高い場合もある
もちろん、心身が限界なら最優先は休むことです。ただ一般論としては、30代は固定費が上がりやすい時期でもあるので、
貯蓄
失業・休職の制度
次が決まるまでの期間を現実的に見積もることが大切です。労働力調査では失業者数が195万人、失業期間の内訳なども公表されています。数字は冷たいですが、冷たい数字を先に見ておくと、心は少し落ち着きます。
30代の転職は、「遅いかどうか」よりも、自分の条件を整理して、選択肢を丁寧に比べることが要です。
不満は条件に分解する
変えたい/守りたいを分ける
転職以外の選択肢も並べる
判断軸は5つに絞る
期待値のすり合わせ(入社後ギャップ対策)を大事にする
今すぐ結論を出さなくても大丈夫です。
「転職する/しない」を決める前に、“自分の軸が言葉になった”という状態を作れたら、次の一歩は自然に選びやすくなります。

